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「癌」「白血病」を子供にどうを伝えるか: 忍者とチームになってみた話。


今回は、どのように子供達に「癌」であること伝えるか、のお話。

8月に医師から寛解の知らせを受けた後、家族で時間を見つけては、思う存分楽しめなかった夏を取り戻すかのように自然の中で遊びました。そして、キャンプに行き、みんなで火を囲んでいる時、家族に今までの感謝を伝え、「今まで多くの心配と負担をかけてごめんね」と伝えたのです。その時の、他の3人の顔をいまでも鮮明に覚えています。火に照らされた彼らの顔を。

キョトン

「なんでママが謝ってるの?」 「ママは大変だったけど、何も悪いことしてないでしょ?」 「病気のことで心配だった時もあるけど、ママは心配をかけてはないよね?」 「僕は、ママが病気になったことはすごく悲しいことだけど、そのことで白血病のこととか、癌のことを知る機会ができたことに感謝してるんだ」 「そうだよね、白血球なんて聞いたことなかったしね」 「血小板の働きについて習ったしね」 「じゃぁ、ママにありがとうだ」 すごい勢いで反論し、自分の持っている白血病の知識を自慢げに語る子供二人と、それに真剣に加わっている夫の姿を見て、なんだか吹き出しそうになり、そして心がポカポカしたものです。


うちの家族が、特に子供達が、私が癌になったという事実をジャッジせずに受け入れ、お互いの感情を素直に出しながら、治療開始から今に至るまで「チーム」として一緒に歩んでこれたのは、はじめの段階でしっかりと子供達と話ができたからだと思います。

私たちにとってベストの状態で、子供達とスタートラインにたてたことで、治療に対して、新しい生活に対しての家族の協力的な関係を築けたからだと思います。

うちの場合

うちには忍者好きの子供が二人います。私が白血病の宣告を受けた時、長男は8歳、長女は5歳。しかも、長男が9歳の誕生日を迎える5日前のことでした。



自分が癌であると言われた時、これから1ヶ月の入院を含めた治療が始まると言われた時、やはり最も心配したのは子供達のことでした。母ですから。彼らにどれだけの心配をかけるのかを心配し、彼らにかける負担を思い、心が重くなったりもしました。

もともとうちの家族は、子供とも様々なことをオープンに話すことを大切にしていて、お互いの気持ちをシェアする時間を日常から取るようにもしています。だから、子供達に私が白血病になったことを伝えるつもりではあったのですが、実際どんな言葉を使い、どのように伝えればいいのか自分の中でハッキリと分からない部分もありました。



詳しく話しすぎて、子供達を怖がらせてしまったらどうしよう。

「死ぬこともあるの?」と聞かれて、「それはないよ!」と答えて(私自身そう信じてたということもあり)、もし何かあった時に、子供にかなり大きな嘘をついたことになってしまうな。 とか。

だから、子供達と実際に話をする前に、「子供達に親の癌をどのように伝えたらいいか」ということを、子供専門のソーシャルワーカーと話ができたことは私たちにとってとてつもなく大きな助けとなりました。大げさのように聞こえるかもしれませんが、治療中で何よりも役に立った情報の一つだったようにすら思います。「始め良ければ全てよし」と言えるくらい、そのことが「終わり良ければすべて良し」につながったように思います。

実際にどう伝えたらいいのか


アメリカは個人としてでなく、家族ひいてはコミュニティを巻き込んで「チーム」として病気を治療していこうという考えが強いように思います。ですから、このソーシャルワーカーは、私たち夫婦との対話に時間を割いてくれただけで無く、子供達を病院に招待し、病院ツアーをしてくれたり、子供の学校の担任の先生や校長先生と話をしてくれました。家庭で、学校で、子供に様々な感情が起こり、それが素直に表に出た時や、うまく外に出せずに心と反する行動を取ってしまった時に、どのようにしたら子供に寄り添うことができるのか、どのような対応方法があるのかなどを話してくれました。(それに関してはまた後日。)

前置きが長くなりましたが、実際にうちの忍者たちに私が癌であること、白血病であることを「どのように伝えたらいいか」を書いてみようと思います。ただ、子供の年齢や性格、集中力、置かれている状況で最善の方法は変わると思いますが、私の習ったこと、体験したことが少しでも参考になれば嬉しいです。


いつ伝えるべきか

自分が伝えたいことが決まったらすぐにでも

子供達は、「いつもと違う何か」を感じています。彼らが勝手な想像を膨らませる前に、しっかりと話をする時間を取ります。言いづらいと思っても、子供のためには早い段階でちゃんと話してあげるのがいいでしょう。

落ち着いて話せる時間をとる。

子供と話をするときは、「ながら」で話すのではなく、しっかり「話す」「子供と向き合う」ための時間を確保し、その場の全員が落ち着いて話をできる場所で話をします。寝る前などではなく、話した後に子供が遊びの時間が持てるようなタイミングがいいかもしれません。うちの場合、兄弟別々に話す時間を取りました。


どのように伝えるべきか

「癌」という言葉を使う。

年齢によるのかもしれませんが、「病気になった」と大まかに話したり、「ママの身体の中で悪者が〜」などと言わずに、「ママは癌になった」ということを正確に伝えます。そして、それがどのような癌で、身体にどのような影響が及ぶのかを話します。ある程度の歳の子供になると、どこかで「癌」という言葉を聞いたことがあるでしょう。そのことで、「癌」とは風邪のようにすぐに治るものではないということ理解します。ただ、「癌=死ぬこと」と思っている子供も多いので、「癌ってなんだか知ってる?」と聞いてみて会話を始めるのもいいかもしれません。

大人の間で使う言葉を使う。

「抗がん剤」「放射線治療」など、大人の間で使う言葉を使って子供にこれから受ける治療について説明をします。治療中、自分の聞きなれた言葉が出ることで、子供は自分がチームの一員だと感じられます。知らない言葉を大人が話すと、「自分たちに伝えられない何か(悪いこと)が起きているのではないか」と不安になることがあるようです。子供の想像力は大人よりも豊かで鮮明です。そして、現実に起きていることより、さらに悪い状況を想像してしまうものです。

子供たちのせいで癌になったわけでないことを伝える。

子供たちはこの状況に限らず、何か悪いことが起きた時に、自分たちを責めてしまう傾向があるようです。「僕が○○したから/○○しなかったから、ママは病気になったんだ」ということが、完全な間違いであることをしっかり伝えます。

治療中「いい子にしてたらママは早く帰ってくる」「二人が喧嘩してるから、ママは頭が痛くなった」などということも言わない。健康状態の良し悪しは子供の行動と関係ないということをはっきりさせておきましょう。

ママのせいで癌になったわけではないことを伝える。

上記と同様、白血病という病気は原因が不明であること、「ママが○○したから/〇〇しなかったから、ママは病気になったわけではない」こともしっかり伝えます。

移る病気でないことを伝える。

子供の不安を掻き立てないためにも、風邪のように他人に移るものでないことを伝えます。ハグをしてもキスをしても移らないことを伝えます。

どんな感情が起きてもいいよと伝える。

癌の話を伝えた時、これから先治療を進める中で、どんな感情が起きてもいいということを伝えます。悲しかったり、寂しかったり、イライラしたり、嬉しかったり、どんな感情でも我慢しなくていいよ、と伝えます。そして、ママもいろいろな感情が起きること、いっぱい泣いてしまったりもしたんだよと伝えます。話をしながら一緒に泣いてしまうことも大丈夫。そして、気持ちを伝えたい時には、いつでも聞くからねと伝えます。伝える方法(入院中の手紙や電話など)について作戦会議をするのもいいかもしれません。

ごめんねではなく、「さみしいね」などの気持ちを共有する。

「ママが病気になってごめんね」「ママがいつもみたいに面倒見てあげられなくてごめんね」ではなく、「入院すると会えなくなってさみしいね」「早く遊べるように、治療してくるね」などと、「ママ」自身と「癌」や「治療」ということを混同しない。(そうとわかってても、始めの話のように「申し訳ないなぁ・・ごめんね」と思ってしまうのも事実なんですが、夫が一環してその立場を保ってくれていたのには感謝です。)

入院するのはお医者さんの指示だと伝える。

子供は「お医者さん」「先生」などにスペシャルな感情を持っているものです。だから、「子供に会えなくてさみしいけれど、お医者さんの指示に従って入院することにした」「白血病専門のお医者さんが治療をしてくれる」ことを伝えます。

死ぬのかと聞かれたら

白血病という病気は、高齢者やもともと健康に問題にある人に起こりやすいことだけれど、ママはそのどちらでもないと伝える。

分からないことは、「分からない」と伝える。

答えが確実に分からない場合は、「その質問に答えられるといいんだけど、ママも分からないんだ」「今度先生に聞いてみるね」などと伝える。嘘はつかない。


伝え終わったら

大好きだよと伝える。

いっぱいいっぱい伝えてください。子供を安心させ、愛をいっぱい渡します。

子供に聞きたいことやシェアしたいことがあるかを聞く。

話の途中でも、子供の表情や態度に応じて随時確認してあげるといいでしょう。

子供を信じる。


自分の子供の「どんな環境でもたくましくやっていける」能力を信じてあげましょう。大人ができるのは、正しい情報を伝え、彼らの感情を受け入れ、ケアをすること。あとは子供達を信頼して大丈夫。

遊んできていいよと言うか、一緒に遊ぶ。

話がおわり、子供からの質問もなかったら、「遊んできていいよ」と伝えましょう。うちの場合も、話が終わったらすぐにお隣さんと遊びに行きました。拍子抜けするくらいの変わりようでしたが、それが健康的な対応なのだと思います。子供に余計な不安要素を与えなかったために、子供もすんなりと日常に戻れたのだと思います。


伝え続ける

これらのことは、初めて子供達に「癌」ということを伝えた時だけでなく、治療中に何度も普段の会話の中に織り交ぜて伝え続けたことでもあります。正確に、正直に。子供も私も、悲しい時、疲れた時、素直に感情を出し、助けられる環境があったことは、お互いにとって大きな助けであった共に、私がスムーズに治療と自分の身体に向き合えた要因の一つのように思います。

私の、私たちの白血病との生活を通して、一貫してチームとして協力的な関係を保ち、子供もたちとよりよい信頼関係を築けたのもそのお陰かなと、希望も込めて、母はそう思ってしまうのです。 あ、全然関係ありませんが、うちの子供達、忍者だけでなく相撲も好きです。朝起きると、パジャマで作ったふんどし出迎えてくれることもあります。 日本びいき。


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これは、ある日突然、急性骨髄性白血病との告知を受け、「白血病治療中」という新生活を始めた私が、寛解に至るまでの7ヶ月間、どのように癌と向き合い、毎日をより快適に過ごすために何をしたのかなど、「白血病暮らしの知恵袋」としての記録です。自分の価値を押し付けたいのではありません。こんなことを感じて、実行した人がいたということを知ることで、何かのお役に立てたら幸いです。

これらの記録は医学的根拠に基づくわけでもありません。一口に白血病と言っても、それぞれの体調や置かれている立場は様々であり、これらのことが全ての人に当てはまる、役に立つとは限りません。それどころか、時には寧ろ治療の妨げになってしまうこともあるかもしれません。そのことをご理解の上、あくまでも参考程度に読んでいただけたらと思います。


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