もらって嬉しかった贈りもの: 石のスープを飲んだ話。

今回は、治療中にみんなからもらって嬉しかった贈りものについて。

完全に、私の主観と体験に基づく内容ですが、もし大切な誰かが、今病気に立ち向かっていて、何かプレゼントしてあげたいけれど、何をあげたらいいか分からないと思っている人がいたとして、その方々にとって何かの参考になったら嬉しいです。


ストーンスープ


私も子供たちも「ストーンスープ」という絵本が大好きです。

旅をしていた2匹の豚の兄弟が(本によっては、これが兵士であったり、僧侶であったりもします)、お腹を空かせながらある村にたどり着き、食べ物を分けて欲しいとお願いします。しかし、その村に住む人達はたちは、みんななんだか不機嫌で不幸せ。他人を信用しないばかりか、他人に自分の物をシェアしたり、人を助けるなんてとんでもないと思っていたのです。だから、その兄弟が村に来た時も、ドアを閉め、持っている食べ物を隠してしまいます。

そこで2匹は、村の真ん中で火を起こし、そこに鍋を乗せると、水と拾ってきた石を鍋に入れ、石だけで作れる「石のスープ」を作ることにします。村人たちは、聞いたこともみたこともない石のスープに興味津々です。

グツグツと石が煮えた頃、「このストーンスープはやはり美味しい。でも、塩があれば、さらに美味しい味になるのに。あー残念だ。」そう2匹は話すのです。それをみていた村人は居ても立っても居られずに、「うちに塩がある」と塩を差し出します。

そして、塩をスープに加えたあと、「ほら、やっぱりだ。これでだいぶ美味しくなった。でも、野菜があれば、さらにスペシャルな石のスープになるのにな。」と2匹が言うのです。すると、「うちに人参があるわ」「うちにはジャガイモがある」と次々に村人たちが自分の持っているものを持ってきます。

そうした調子で、他の村人が他の野菜やキノコを持ってきて、肉屋が肉を持ってきて、どんどんスープが出来上がっていきます。その後、パン屋が付け合わせのパンを持ってきて、他の誰かがワインを持ってきて、気がつくと村の真ん中に長いテーブルが設置され、みんなでワイワイガヤガヤとディナーパーティーの準備が始ります。そして、スープが完成し、村人全員でスープを飲むのです。時間を共有する仲間に囲まれて、楽しい会話と満面の笑みと共に。

村人たちは口々にこう言います。 「なんて美味しいんだ。こんな美味しいスープは飲んだことがない」と。

石だけで作ったスープなのに。


私も石のスープを飲んでみた


癌の治療中、そして今でもなお、みんなが私や私の家族のためにたくさんの石のスープを作ってくれました。

ファーマーの友達が家に新鮮な野菜を届けてくれ、マシュルームファーマーからは箱いっぱいのマッシュルームが届けられました。たくさんの美味しい食べ物が、私たちのもとに届けられ、抗がん剤で食欲がないときに届けてもらったスムージーやボーンブロスには本当に救われました。


少しでも外の世界に触れられるよう、治癒力のある自然を近くに感じられるようにと、写真家の友達は彼女の撮った素敵な自然の写真をたくさん現像してくれて、アーティストの友達は自分たちの作った作品の他に、私が退屈しないようにとアートの道具を持ってきてくれました。


「宝探し」の得意な友達や我が子からは、クリスタルや「スペシャルな石」たちをもらい(思ってる以上に、割とみんな自分にとっての特別な石を持ってるみたい!)、本好きの友達からは、様々な本が届きました。マッサージをしに病院にきてくれた友達もいたし、連日ただ「一緒に笑うため」に友達が病院にお見舞いに来てくれました。


お菓子屋さんの友達がケーキを届けてくれ、様々なところからたくさんのカードももらいました。子供達を学校からピックアップして、プレイデートに連れて行ってくれた友達もいました。届いた折り紙で、病院の壁がいっぱいになりました。

みんなが、自分の持っているもの、自分ができることをシェアしてくれました。私にとっての石のスープを作ってくれたのです。そして、目に見えるものの奥にあるみんなの優しさとともに、私のお腹と心を満たし、暖かくしてくれました。

それらが、私と私の治療、ひいては私の人生に必要な栄養素となりました。


ギフトアイディア

治療中にみんなから頂いた物も行動も、どれも本当に嬉しいギフトでした。それら全てと共に、みんなの想いや祈りを受け取ったから、本当に嬉しかったのだと思います。それは本当に本当である中で、治療中の贈りものとしてに参考になりそうなものを下記にあげてみます。

前置き、ながっ!

Gift Idea 1: 靴下

入院するときに、私の自然療法士に言われました。「もうここまできたら、一番おしゃれな入院患者になっちゃうくらい、入院生活満喫するのよ」と。それが、ドクターからのアドバイスかと思うと、なんだか可笑しく、同時にそんなドクターがいることが嬉しいなとすら思ったものですが、彼女のいうことにも一理、いやそれ以上の意味があったように思います。

もこもこの暖かい靴下、指圧効果のあるコンプレスソックス、可愛い靴下から、普段自分では買わないような楽しい靴下まで、多くの友達が靴下をプレゼントしてくれました。それらを、実際に履いてみて思ったのですが、お気に入りの靴下を履いてると、なんだかそれだけでテンションあがるのです。ベットに座っていると、ちょうどいい具合に足が目に入ってくるもので、そんな時にチーターの靴下が目につくと、なんだかそれだけでハッピーになったのです。私の足の先で、微妙に間延びしたチーターは、単純な私を笑顔にしてくれたのです。

靴下に限らず、パジャマにしても、自分のお気に入りの、着心地のいいものを身につけていると、それだけで「いい日」になりそうな気がしました。逆に、夫の持ってきてくれた私の毛ばたち過ぎてるスエットパンツを履いた日は、なんだか疲れ果てた病人のようで、結局すぐに履き替えて家に持って帰ってもらいました。

靴下はあげる方も、もらう方も他のものに比べて、敷居の低いギフトでありながら、簡単に私を元気付けてくれるアイテムでした。

Gift Idea 2: 本


本はやはりもらって嬉しかったです。しかも、貰い物の本は、送ってくれた人の好みが伝わるというか、まるでその友達と世界を共有しているような気分になり、尚更嬉しかったです。時間の関係で入院中に読めなかった本もありましたが、病室にあるその本をみると、くれた友人が一緒にいてくれるような感覚にすらなったものです。

気分が悪い時などは、文章を読み続けることが辛かったので、寝転びながら、しかも目を閉じてでも「聴ける」本、オーディオブックのギフト券も嬉しかったです。

Gift Idea 3: 家族のご飯

入院中は、どうしても家に残してきた家族のことが気になるものです。そんな家族のために、時々友人たちが届けてくれたスープやお惣菜などは大変ありがたかったです。母がうちに住み込みでいてくれたとはいえ、たまには他人の作ってくれたものを食べられるというのは純粋に嬉しいし、助けにもなったようです。そして、家族が嬉しいと、私も落ち着いて治療に専念することができました。

アメリカでは、出産直後の家族、病気になってしまった家族がいる人たち、不幸があった家族などをサポートするために、「ミールトレイン」というものを設定することがあります。友人、近所の人たち、同級生の親御さんたちが協力して、「この日の夕飯は私が担当します」「この日のランチはうちが一つ余分に持たせます」など、自分が食事を届けられる日を選んで、カレンダーを埋めていきます。届ける側は、ランチだったら先生に渡し、夕飯などは受取人の家の外に置いてあるクーラーボックスに入れておくなど、受け渡しもできる限りお互いに負担が少ない形で行われます。食事を届けにきてくれたから、外に出てお礼を言わなければ・・ということが寧ろ重荷になってしまうこともあると思うので。

うちはこのミールトイレインを利用はしませんでしたが、このサービスが必要かどうか、複数の友人に聞かれました。人によっては退院してから急に毎日料理を作るという負担が大きすぎて、退院してから一年ほど(週に何回かでも)このミールトレインを利用する場合もあるそうです。

Gift Idea 4: プレイデート


治療中は、特に入院中は、子供達のために時間を作ってあげられないことが気がかりでした。ですから、誰かがプレーデートに連れて行ってくれて、彼らが友達と楽しい時間を過ごせてる、いつも通り思いっきり遊べてるということは、私に安心感を与えてくれました。何度も言いますが、この安心感があるということは、スムーズな治療中に大切な要素でした。

私にとって癌の宣告が突然であったのと同じく、子供達にも母親の治療開始はあまりにも突然だった中、彼らの「いつも通りの」日常をできるだけ保ってあげるためにも、プレイデートのお誘いは嬉しかったです。病院の往復と子供の世話をしていた夫にとっても、いい息抜きの時間が取れたのは助けになったようです。

Gift Idea 5: メッセージ


メッセージは、どんな形でも本当に嬉しかったです。どんなに短いテキストメッセージでも、Eーmailでも、切手を貼って送ってくれたハガキ(こんな時期だからこそ、これは嬉しい!)でも、本当に全て嬉しかったです。

先日受講したNVC(非暴力コミュニケーション)のクラスで、実は多くの人が持っている最大のニーズは「大切にされること」「求められること」なのではないかということが話に出ました。私は治療中、みんなのお陰でこの「大切にされている」ということを日々実感することができました。そのお陰で、とても満たされた気持ちで日々過ごすことができました。心が満たされていると、免疫力も上がるということで、やっぱりみんなに救われたのだなと思います。

メッセージの最後の「返事はいらないよ」という心遣いは、体調がすぐれない時に、返事をしなければというプレッシャーを減らしてくれました。同時に、「しなければ」の思考に囚われすぎて、辛いときも無理をして、最終的に無理をし過ぎてしまうという私の悪い癖を手放す良い練習にもなりました。大袈裟のように聞こえるかもしれませんが、日々少しずつ練習していかないと、なかなかやめられない・・

Gift Idea 6: ペンギンのお面


これが、他の人の役にたつかはわかりませんが、私がもらってすごく嬉しかったものの一つです。そう、ペンギンのお面。「人間であることに疲れたらかぶってね」というメッセージとともにうちに届きました。私の心が不安定になることを心配してくれたことが伝わって、ポカポカした気持ちになると同時に、これを作っている友人の姿を想像したらなんだか可笑しくて、それだけで元気をもらいました。


コミュニティに支えられて

治療中に、多くの人が各自の持っているものとできることで、私をサポートをしてくれました。それはまさに、美しくサステイナブルなコミュニティの縮図だったように思うのです。

そして、そんなコミュニティが私にはあるということを肌で感じ、「私は一人じゃない」と思えたことは、私を強くし、私の心も体も救ってくれました。全ての方向から支えてくれる人がいてくれたから、私はしっかりと立っていられました。それが病気になって得た何よりのギフトで、癌にはなったけど、私はかなりの幸せ者だと思わせてくれたのです。

もし今、どこかであなたの大切な人が、病気を治そうと前に進んでいるになら、あなたの存在自体が何よりのギフトになりうるということを覚えていて下さい。そして、その人が楽しそうな姿を想像し、ポジティブなエナジーをいっぱい空気中に送り込んでください。

その想いは、あなたが思っている以上の力を発揮して、あなたの大切な人を支えてくれると思うのです。私は、そう信じています。

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これは、ある日突然、急性骨髄性白血病との告知を受け、「白血病治療中」という新生活を始めた私が、寛解に至るまでの7ヶ月間、どのように癌と向き合い、毎日をより快適に過ごすために何をしたのかなど、「白血病暮らしの知恵袋」としての記録です。自分の価値を押し付けたいのではありません。こんなことを感じて、実行した人がいたということを知ることで、何かのお役に立てたら幸いです。

これらの記録は医学的根拠に基づくわけでもありません。一口に白血病と言っても、それぞれの体調や置かれている立場は様々であり、これらのことが全ての人に当てはまる、役に立つとは限りません。それどころか、時には寧ろ治療の妨げになってしまうこともあるかもしれません。そのことをご理解の上、あくまでも参考程度に読んでいただけたらと思います。