今回は「副作用」を軽減するために私が試したことについて。
以前、抗がん剤による体へのダメージを極力減らし、自己免疫力をあげるという目的で、自然療法的アプローチを試したという記事(下記リンク)を書きました。その中でも、副作用への対処法について少しだけ記載したのですが、改めて少し詳しく書いてみようと思います。
先日友人から連絡を受け、現在抗がん剤治療を受けている彼女のお母さんの体調が優れないという相談を受けました。副作用が辛く、見ているだけで辛いと。でも、あまりに全てのことが初めてで、何からどうしていいのかわからないと。そこで、彼女に自分の体験を少し共有したのですが、話をしただけなので、実際に私のとった対処法が彼女のお母さんに役立つのかもわからないにも関わらず、思った以上の感謝の言葉を受け取ることとなりました。
そして、思い出したのです。
副作用に苦しむ人やそれを見守る家族の、どうにかして状況を良くしたい、楽になりたい、楽にしてあげたいという、藁にもすがるような想い。試せるもは、試してみようという切実な想い。
私もありました。
そこで、そんな想いに少しでも寄り添えるよう、今辛い経験をしている方々が、これらの方法で少しでも状況が改善し、ほっと一息がつけますように、より穏やかな時間が過ごせますようにとの願いを込めて、書いてみようと思います。 誰かを支えられる強い藁になれますように。
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私の抗がん剤治療について
抗がん剤の種類によって主な副作用に大きな違いがあるようなので、まずは私の行った抗がん剤治療を下記に記載します。
寛解導入療法
イダルビシン(1日目〜3日目)+シタラビン (1日目〜7日目)
7日間: 24時間投与
その後3−4週間の回復期 x 1サイクル
地固め治療
シタラビン大量療法 (1・3・5日目)
一日置きに3日間: 朝3時間の投与・12時間の休憩・夜3時間の投与
その後3−4週間の回復期 x 4サイクル
アメリカの癌治療は、患者の心の状態と生活の質を重視し、できることならば出来る限り入院期間を短くして治療を行います。そうすることで、癌の治療中でもあっても、自分の大切な人に囲まれながら、より普段に近い生活が行うことを可能にしてくれます。
私の場合、まず初めに30日ほど入院して、寛解導入療法を行いました。その後の地固め治療は、入院と通院のどちらでも良いと言われたのですが、初めての抗がん剤大量投与への反応が不安であったため、何かあった時に早い対応が取れるようにと、1回目のサイクルは5日間だけ入院して実施しました。そして残りの3サイクルは通院で行い、朝一に病院へ行き抗がん剤を投与し、お昼過ぎに自宅に戻り、夕飯後から深夜過ぎまでその日2回目の抗がん剤を投与するという形を取りました。
病院が家から20分と比較的近かったものの、抗がん剤をしてすぐの車での移動や、朝の1時過ぎまでかかる治療は正直結構しんどいものでした。それでも、治療中に自分のベットで寝れること、中休みの日や回復期を自分の家で家族と自然と共に過ごせたことは、純粋に嬉しいことであったと同時に、そのことが結果として順調な回復につながったと信じています。
副作用についての事前知識はありかなしか
私が、白血病との告知を受け、抗がん剤治療をすると言われたときに、真っ先に浮かんだのは、映画で見たことのある、吐き気に襲われ苦しんでいる患者さんと、抜ける髪の毛を掴み涙する患者さんの図でした。
しかしながら実際は、抗がん剤による副作用の出かたや、出るタイミングは、受ける人のコンディションや、薬との相性などにより千差万別のようです。
小児白血病病棟でナースをする友人と話をした際は、「今は医学も進んでいるし、吐き気を止める薬はいくらでもある。心配しないで。」と強く言われました。抗がん剤治療を体験した友人からは、「副作用の口内炎が一番辛くて、しばらく何も口にできなかった」とも聞きました。ネットを見ると、皆さんが他の誰かのためにと、自分の経験した副作用を含めた体験談を載せてくれてもいました。
そうではある中で、私は、副作用について基本的知識以外の事前情報をあまり入れずに抗がん剤治療に望むことにしました。「病は気から」を体現するような私は、副作用を知れば知るほど、その副作用にかかったような気になったり、実際にかかってしまうのではないかと思ったのです。髪が抜けるとか、口内炎ができるとか、そういうことは気持ちの持ちように関係ないのかもしれませんが、あまりそのことばかり心配していると、それだけで、重たい気持ちになってしまうような気がしたのです。
それよりも、基本的な情報を基に、事前に取れる予防策だけとっておいて、あとはまっさらな状態でその時の自分の体と心に向き合い、体のちょっとした変化に敏感であるようにいたいと思ったのです。「だいたい二日後くらいから吐き気が出る」という情報と共に警戒心を高めるよりも、吐き気が実際に出てから対処をしたいと思ったのです。予備知識がない分、何が起きてもあるがままに受け入れるしかないという状況を作りました。
ただそれは、私が頭でっかちになると、感覚が鈍くなるというタイプだったからであって、人によっては事前に全てを把握しておきたいという人もいると思います。知識を入れ、心の準備をしておくことで、副作用が出たときに、「おーきたきた」と素直に受け入れ、起きなかった副作用を喜ぶという選択もあります。
詰まるところ、両方とも起きてしまったものは、対処するしかないのです。そして、やはり副作用は嬉しいものでもないですし、起きないなら起きないでくれた方がいいというのも事実です。でも、自分のタイプに合わせて、事前にどの程度の知識を入れるか入れないのかの選択をした上で治療に臨むことで、副作用への向き合い方や付き合い方が変わるように思うのです。
副作用について事前にとことん調べるか、調べないか、一見するとすごく些細な違いに聞こえるかもしれません。でも、こういう些細な選択の積み重ねは、選択の余地のある部分において、治療を自分軸で行うということなのだと思います。自分で意思決定できることをし、「病気を直すのは自分だ」「自分が健康になるためにできることはする」という姿勢は、うちなる治癒力を刺激し、早期回復を促してくれるように思うのです。
「信じるものは救われる。」感覚で生きている私は、そういう思いを持って治療に臨みたかっただけかもしれません。
副作用の対処法
そんな心持ちで臨んだ抗がん剤治療ですが、私もいろいろ副作用を体験しました。担当の先生が「やっぱり出たね」というものもあれば、様々な分野の専門家を巻き込み、数日間かけて何が起きているのかの解明を図った症状もありました。軽いものから、それは辛いものもありました。そのなかで、特殊な副作用はさておき、ナースの方達に言わせると「あるある」だった副作用に対して、私が自分の状況を改善するために試し、効果的だった方法を紹介してみようと思います。
吐き気・食欲不振
様々な味を用意する 気分が悪い時や、食欲がない時に、完全に受け付けないものがありました。ただ、それも変化します。私の場合、甘いものや味の濃いものが受け付けなくなり、塩っけのあるクラッカーを欲していた次の週に、むしろその味が吐き気を引き起こしたりもしました。そのため、甘いもの、しょっぱいもの、酸っぱいものなど、常に様々な味覚を満足させる食べ物やスナックを用意しておきました。気持ちが悪い時でも、塩クラッカー一枚、ミントタブレット一つなど、ほんの少しの味で症状が軽減することもありました。
様々な温度のものを用意する 味覚と同様に、欲する温度も変化しました。氷で冷やした冷たい飲み物しか受け付けない時、ぬるま湯がいい時、暖かいお茶が飲みたい時など。特に、寝て起きた時に、その時の気分に応じてすぐ飲めるよう、氷水と熱いお湯を常にタンブラーに入れておきました。(ぬるま湯は混ぜればいいだけ)
生姜ジュース+炭酸水 気持ちが悪い時は、炭酸水のシュワシュワ感が気分をスッキリさせてくれました。ただ、甘みは余計に気分を悪くさせたので、無糖のものを飲んでいました。吐き気を鎮めるのに、ジンジャーエールが効果的だと教えてもらいましたが、市販のジンジャーエールの甘味が辛く、無糖の炭酸水に生姜ジュース(しぼり汁)を混ぜて飲んでいましたが、これにはかなり助けられました。治療中は、なぜか車酔いもしやすく、甘みのない、生姜のグミも携帯していました。
梅干しおにぎり
気分が優れない時でも、割と食べられたのが塩っけのある梅干しのおにぎりでした。それも、少し冷たくなったくらいのが、美味しかったのを覚えています。健康促進のスーパーフード、梅干しが入っていると栄養面でもボーナスでした。日本のソールフード万歳!
ミントの香り
吐き気が強い時は、ミントやシトラスの香りを嗅ぐのが効果的ということで、エッセンシャルオイルをコットンボールにつけたものや、ミントティーのティーパックを枕元においておきました。私の場合は、ミントの香りは良かったのですが、シトラスの香りは余計に具合が悪くなりました。香りの強さも含め、いろいろ調整してみるのがいいと思います。
無理に食べない
気持ち悪くて、食欲がない時は、無理して食べても気持ちが悪くだけなので、無理をしないようにしました。水分は脱水症状を防ぐだけでなく、体内の毒素を外に排出する役目も果たすため、1日2リットルは必ず摂取するようにしていました。十分な体力があるという前提であれば、体が食べ物の消化にエネルギーを使いすぎるより、無理して食べなくても、免疫力の回復と病気の克服にエネルギーを使える状況でいいのだと思います。
薬に頼る 私は西洋医学の薬が嫌いです。必要最低限の薬以外は取らないようにとやってきました。それであっても、どうしても具合が悪い時や、痛みに耐えられない時は、やはり素直に頼ったものです。もちろん、最初は飲まないで自分の体調の変化を見たのですが、頼って楽になるときは、頼るという選択も大切なのだと学びました。
口内炎
Zincのサプリメント これは、自然療法師の方におすすめされたのですが、Zincのサプリメントは、口内炎防止につながるとのことで、治療中毎日摂取していました。
塩水うがい 口内炎防止と、感染症予防のために、毎日何度も食塩水で口を濯いでいました。トイレに行く度にうがいするくらいの頻度で行なっていました。
<塩水の作り方>
水4カップ+塩小さじ2
水道水を一度沸騰させ除菌したのち、ぬるま湯まで冷まして塩を加えよく混ぜる。
マジックマウスウォッシュ 血小板の低下により、口内に痛みを伴わない血豆のようなものがやたらとできたものの、割と順調に口内炎とは無縁でいたのですが、後半のサイクルではやはり口内炎に悩まされることになりました。その時に処方してもらったのが、その名も「マジックマウスウォッシュ」。ちなみに正式名称です(笑)。 ピンクのドロドロしたうがい薬なのですが、細菌予防の抗生物質、炎症を抑える成分、そして痛みを和らげるリドカインという麻酔薬まで入っている、正直使用を躊躇したくなるような強烈なやつ。まずいし、使用後、歯医者の処置をしてもらった後のような麻痺状態が喉から口の中まで広がり、気持ち悪いです。しかし、背に腹はかえられぬ状態の時には、これがまさに救世主となったわけです。最後のサイクルは、口内炎防止のためにも、口内炎ができていない状態でも1日に2回ほど使用していました。
アメリカの病院では一般的に使用されているようで、日本の病院でも場所によっては処方されるようです。
疲労感
歩く ゆっくりでもいいので、毎日少しでも歩くようにしました。入院中は、病棟の中を何周も歩き、家に帰ってからは毎日近くの森を散歩していました。吐き気がないけど疲労感がひどい時でも、重い腰を上げてあえて少しでも歩くことで、血の巡りが良くなり結局は気分も改善されたものです。
輸血直後は、赤血球の値が回復するのをいいことに、少し元気になると長距離の山登りやハイキングまで行っていましたが、「いや、無理はいけないね」と思うこともしばしばあったのも事実です。何事も治療中はほどほどということも忘れずに。
また、病院で歩く時は、いつも決まったお気に入りの曲を聴きながら歩き始めるようにしていました。好きな曲だから、結果的にいつも聞いていたというだけなのですが、そうすることでその曲を聞くとテンションが自然に上がってやる気が出たものです。単純な自分をマインドコントロールするにはおすすめの方法だったりします。もう、パブロフの犬ですね。
多分パブロフ並みにヨダレは垂らしてますが、これはうちの犬です。
寝る
歩くことは大切ですが、同時に休めるときに休むというのもすごく大切です。目に見えない体内では絶え間なく血液細胞が増加を続け、体のバランスを保とうと、免疫力を回復しようとフル活動しています。そうすることで、普通の生活をしているようでも、実は相当の体力を消耗しているのです。ですから、昼寝ができるタイミングがあったら(というかあえてそんな時間を作って)、しっかり休むのがいいと思います。
深呼吸
普段から意識をして深呼吸をするようにしていましたが、入院中に疲れを感じている時などは、外の景色を眺めながら、何度も深呼吸をしていました。そうすることで、血液の流れがよくなり、自然と落ち着いた状態になっていました。
マッサージ
自分に優しくできる時はする、甘やかす時は甘やかす!
当然のように聞こえるこのことが、普段の生活をしているとなかなかとできないもので、一番大切にしなければいけい自分自身を後回しにしてしまうものです。でも、特に治療中はそのことを意識し、疲れたときにマッサージにかかれるチャンスがあればお願いしてやってもらいました。血液細胞回復の段階では、筋肉の痛みも出てくるので、マッサージは精神的にリラックスできただけでなく、そんな筋肉痛を実際に和らげる効果もありました。
鍼治療 どの副作用に効いたのかはわかりませんが、定期的に鍼の治療も受けていました。癌の治療中は不眠が続いていたのですが、鍼を受けている時はぐっすり眠れ、そしていつも体が軽くなったような感覚を得ることができました。そして目に見えない部分でも、鍼の効果はあったものと信じています。
脱毛
これに関しては、別の記事にも書きましたが、抜けることを悲しむよりも、髪の毛が抜ける過程に新しい意味を見出し、髪が亡くなっても失いたくない存在がいることを喜ぶようにしました。詳しくはこちらで。
デイビットボウイ現る
どんな状況でも、無理をしないこと、自分に正直であること、これはすごく大切なことだと思います。そして、それをしっかりと口にして医師や周りの人たちに伝えること。そうすることで、みんなで一緒に自分の副作用と向き合うことが可能になります。特に医療関係者の方々は、本当に多くの副作用の出かたやそれに対する対処方法を見てきています。私がここに書いたことより、ずっとずっと多くの知識があります。だから、みんなに頼って試せることを試していけばいいのだと思います。
そして、私の経験からですが・・どんな時でもやはりちょっとした楽しさを見出すようにしていました。辛い時は、素直に辛いと口にもしたし、悲しい時は素直に悲しいという事実も受け止めました。でも同時に、少しでも症状が回復するとそのことを素直に喜び、調子に乗りすぎて後から疲れに襲われたりもしたものの、症状が安定した中休み期を満喫するようにしていました。
一度、口の中にとてつもないサイズの血豆が大量発生し、舌が2倍くらいに腫れて、少しばかり大変だったことがありました。食べ物も飲み物も受け付けなく、緊急入院かという状態でした。結構辛かったのですが、その数日後に血豆が引いた後、舌の半分がきれいに紫色になっていて。なぜか、それが私の中で、デイビットボウイの稲妻メイクを連想させて。
みんなに興奮して伝えたのにあまり分かってもらえなかったのですが(笑)、私の副作用が「血豆ができてやばかった」で終わらずに、「私の舌がデイビットボウイになった」に変わったことがなんだか嬉しかったのです。
と、改めて画像を並べてみても、わかってもらえないかも(苦笑)。タイトルにも書いちゃったのに・・・
ピンクと、赤と紫と・・やっぱり無理があるかも・・・
とはいえ、実際のところ、誰にわかってもらえなくても、めちゃくちゃなこじつけでもなんでもいいのだと思います。なんでもいいから理由を見つけて全てのプロセスにおいて、楽しめる時に楽しんだほうがいいなと思っていたのです。
気持ちの持ちようで、全てがうまく行くわけではありませんし、思うように治らない副作用もたくさんあります。でも副作用の現れは、自分の体が頑張っている証拠でもあります。だから自分の身体にエールを送りつつ、辛い中でも小さな喜びや光を見つけてしっかり前に進むしかないのだと思います。
皆さんの副作用が軽減され、早期回復が促進されますように心から祈っています。 ----------------------------------
これは、ある日突然、急性骨髄性白血病との告知を受け、「白血病治療中」という新生活を始めた私が、寛解に至るまでの7ヶ月間、どのように癌と向き合い、毎日をより快適に過ごすために何をしたのかなど、「白血病暮らしの知恵袋」としての記録です。自分の価値を押し付けたいのではありません。こんなことを感じて、実行した人がいたということを知ることで、何かのお役に立てたら幸いです。
これらの記録は医学的根拠に基づくわけでもありません。一口に白血病と言っても、それぞれの体調や置かれている立場は様々であり、これらのことが全ての人に当てはまる、役に立つとは限りません。それどころか、時には寧ろ治療の妨げになってしまうこともあるかもしれません。そのことをご理解の上、あくまでも参考程度に読んでいただけたらと思います。
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